2020年12月31日
人生の「夏」を謳歌する人々へ贈る那覇発、
珠玉のオルタナティブ・ポップ・ユニット「Home Party People」!
センスあふれる新感覚のサウンドは、まさに令和のマキシ(牧志)系!!
Interview & Text:幸田悟
那覇を拠点に活動するオルタナティブ・ポップバンド、「Home Party People」が2020年11月セカンドアルバム『Touch』をリリースした。3人の個性が無造作にブレンドされた音楽は、直接的に沖縄を語ることはなくても、那覇の日常に漂うリアルな香りを鮮烈に描き出す。それは、3人が那覇の街に生きる中で触れた空気そのもの。センスあふれる新感覚のサウンド・スタイルは、令和のマキシ(牧志)系と名付けたい。30代前半の彼らの人生の悩み、葛藤、その中で見つけた小さな光を自然体で表現するポップスターたちへのスペシャル・インタビュー。
ーー「Home Party People」を結成したキッカケを教えてください
田中 もともと別々に音楽やってました。僕ら音楽仲間はビール好き、料理好きが集まってたんで、よくホームパーティーをしていたんです。最初は、そんなユルい繋がりでした。
古田 それぞれ、ボーカルも担当しているし、同じバンドを組むっていう発想は無かったんですが……。マシュー(田中)から「音楽関連の仕事で県外に行くかも」と相談があっていろいろ迷ったんですが、思い切って「一緒にバンド組まないか」って誘ったんです。
田中 熱いヤツだなって思いました。彼の誘いで、エンジニア的な仕事よりも表に立ちたいという気持ちに気がついたというか……。それで一緒にやることにしました。
嘉陽 僕はもともと古田さんの家も近かったし、バンドにも誘われてたんです。
田中 その流れで2015年に3人で「Home Party People」を結成しました。
ーー3人とも料理男子なんですね。それぞれの得意料理は?
田中 冷蔵庫にあるもので、まかなう名前のない料理が得意。好きな食べ物は「鴨せいろ」です。
古田 仕込みに時間のかかる料理を好んで作ります。レバーのパテとかペーストが得意。好きな食べ物は「馬刺し」です。
嘉陽 得意料理は美味しいもの全般。最近の流行りは「ポトフ」かな。好きな食べ物は生肉。なんなら「馬刺し」。
ーー2016年にミニアルバムをリリースし、コンスタントに活動を続けてきました。2020年は、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けたと思いますが、いかがですか?
古田 2016年のCDリリースを皮切りに、年々ライブの本数も増えて来たんですが、今年はほんと少なくなっちゃいましたね。
田中 アーティストにとっては、試練の年でした。
ーーそんな最中の2020年11月にリリースしたセカンド・アルバム『Touch』。このタイミングでのリリース、がんばりましたね。アルバムのコンセプトを教えてください
田中 ほんとは夏ぐらいに出したかったんですが、リリース・パーティーも考えると、もっと状況が良くなってからと思ってたんですが、11月にリリースすることにしました。僕らの中でも楽曲が旬なうちに出したかったので。アルバム・コンセプトは、「三十路を往くメンバーから、人生の「夏」を謳歌する人々へ贈る珠玉のオルタナティブ・ポップス」です。
古田 心の琴線に触れたいという思いでアルバム・タイトルを『Touch』にしました。
嘉陽 収録曲は、全部で10曲。だからジャケットのイラストのたこの足も10本。それぞれ味わって(笑)。
ーーセカンド・アルバム『Touch』、どの曲もディテールがしっかりしてます。曲調もバラエティーに富んでいて、かなり濃い作品に仕上がりましたね。メンバー自身がセルフ・ライナーノーツを書いているので、その内容に沿ってより深く、分かりやすく曲のねらいなどを紐解いていきます
M.01 拝啓(作詞・作曲:田中秀太郎)
ーー「拝啓、僕の先生」というフレーズが印象的。生涯青春のポップ・ロック・ナンバーですね。後半のギター・ソロに30代一般男性風ミュージシャンの心意気を感じました(笑)
田中 王道の Jロックを目指しました。そのわりには「歌詞がいびつだ」とスタッフに言われましたけど(笑)。僕のギター・プレイの軸を作ってくれたある先輩や歴代のロック・レジェンドへの追悼の想いを込めています。
ーーそれが「拝啓、僕の先生」なんですね。具体的に誰か教えてもらえますか?
田中 大学のサークルの先輩。ロックのみならず、東京の楽しさを教えてもらった人。残念ながら他界してしまったんですが……。ロックなハートに限らず、大人になって失ってしまうものは多いですが、「いい大人なんだから」なんて諦めず、ハマった当時と同じように真正面から向き合っていきたいと思うんです。
M.02 Gooday(作詞・作曲:嘉陽章悟)
ーーイントロのキーボードの音色、フレーズも印象的な曲。ボイス・チェンジャーでエフェクトしたボーカルとサウンドが、揺れる心と街並みをうまく表現してますね
嘉陽 僕はお酒が好きで、明日世界が終わるのかというほど毎日限界まで飲むんです。周りを巻き込んでワンパクするものの、朝になると決まって後悔……。最初は傲慢にも「楽しいからいいじゃん!」って曲を書こうとしたんです。でも、書いてるうちに、だんだん友だちの顔とか思い浮かんできて、自分だけじゃなくてみんなにも「毎日愉快に頑張ってほしい」っていう内容になってました(笑)。
ーー成長とともにパラダイムシフトする部分もあるし、曲も書いている途中でハタと気がつく部分がありますよね。真裏じゃなくて、嘉陽さん流の「斜め45℃のハッピー・ソング」ですね
嘉陽 そのとおりです(笑)。
M.03 シェルター(作詞・作曲:古田)
ーー日々の暮らしのなかで生まれる葛藤や悩み。そんな日常にも一筋の希望の光を見出せる。とても不思議な魅力を持った、共感系の楽曲です。女性ボーカルがいいアクセントになってるし、個人的にとても好きな楽曲です
古田 日常における「逃げ場」について歌った曲です。現実を見つめるための落ち着ける場所というニュアンス。歌詞のなかで自問自答しているんですけど、女声があった方がいいと思って、「HARAHELLS」のラーメン丸さんに手伝ってもらいました。僕は歌詞に自分のことを書くことが多いんです。昔思い描いていた未来と現在を比べたり、目の前の現実や生活を見つめたり。そういった葛藤の中でも、息抜き出来るような場所や趣味、コミュニティがあることで前を向けるなと。
M.04 甲州街道、歩け歩け(作詞・作曲:田中秀太郎)
ーー「甲州街道コンバースで歩く夜」という歌詞に、ほろ苦い青春の匂いを感じます。モータウン・ビートが気持ちいい、疾走感あふれるナンバー!!
田中 大学時代、新宿で飲んで始発前に明大前まで歩いて帰ったときのことを広げて書いた曲です。あの頃は、恋にしても夢にしても移り気で、一途になりたい気持ちはあるのに、なんだか怖くて逃げていた。高いところに実ったぶどうを採ることができず、「あれは酸っぱいぶどうだったんだ」と自身を納得させるような、そういうことを繰り返す日々だったなと。今もそう変わってないんですけどね。
ーー 歩け歩けというよりも、スキップしたくなるビートがいいですね。モータウン系も好きなんですか?
田中 サウンド的にはモータウン・サウンドを現代にアップデートすることを意識しました。
M.05 カシオペア(作詞・作曲:嘉陽章悟)
ーー表をなぞるといつのまにか裏に、そして裏をそのままなぞっていくと元の表にたどり着く、「メビウスの輪」的な歌詞世界。なかなか難解な曲ですね
嘉陽 僕は人の意思を汲み取るのが下手で、人との会話が成立しないことがよくあるんです。言葉を変えて同じ内容ばかり喋っていたり、悪気は無いのに相手を怒らせたり、呆れさせてしまったり。そういうフラクタル性(自己相似性)を曲にしてみました。転調やバラついた歌詞は、そこを意識したものです。
ーー堂々巡り的な?
嘉陽 いろいろ展開していくんですが、結局は元に戻るというとこでしょうか。あっ「メビウスの輪」だ。
M.06 ミナモ(作詞・作曲:田中秀太郎)
ーーとてもファンタジックで甘酸っぱい歌詞。ワルツにしたことで、初恋の思い出とダンスしているようなそんな楽曲に仕上がりになりました
田中 中学に入ってすぐ、一学期の間だけ仲良くした子との思い出に、ファンタジックな要素を混ぜて書いた曲です。ませていてヤンチャなんだけど、色が白くて儚げな子でした。夏休み明けたら転校しちゃってて……。夏を想起させるような曲調にできたらいいなと思って、ワルツにしてみました。
M.07 Monotonous(作詞・作曲:古田)
ーー聴き終わってしばらく「キスは夜更けに」というフレーズが脳内でリフレインしてました(笑)。レゲエ・アレンジが、古田さんの飾り気のない素朴なボーカルにマッチしてます
古田 どうしても酒を飲みに外出したい夜ってありませんか? 事前に予定なんか組んでないけど、とりあえず街に繰り出してやろうみたいな。そんな一夜を切り取ったノンフィクションです。そういう日に限って誰も捕まらなくて、結局はひとりで梯子酒して夜を明かしちゃうんですよね。
M.08 門限破り(作詞・作曲:嘉陽章悟)
ーー嘉陽さんの歌詞は、絵画で言うところの印象派ですね。大人になってもずっと持ち続ける矛盾。かなり断片的でありながら、絶妙なバランスで「あやうく不安定な世代」を表現してます
嘉陽 僕の場合は色々なイメージを重ねて作る曲が多いんです。16歳の頃、家出してスタジオに泊まって、いろんな人に出会っていました。あの頃は何もしなくても楽しいことが多かった。アメリカに行きたいとか、ギターヒーローになりたいって思ったり。音楽を学びに東京の大学に行ったのに、結局中途半端なまま沖縄に戻ってきてしまった。本気で好きなわりに、だらけて、反省しての繰り返し。でも一生やっていく気はあって。ちょっとした後悔や切なさを持ち続けていくんだと思います。
M.09 £2,000(作詞・作曲:古田)
ーースローなロックバラード的なイントロからの、シャッフルビートという展開に、まんまとハメられた一曲。夏っぽくない3人が、終わらない夏を歩き続ける(笑)、そんなHome Party Peopleのテーマ・ソングのようなナンバーですね
古田 僕ら3人について歌った楽しげな夏の曲です。タイトルの「£2,000」は、イギリスの通貨「ポンド」と沖縄の二千円札を掛け合わせたものです。幼少期をイギリスで過ごしたマシューと、沖縄で過ごした僕と章悟。そんな僕らの根っこにある小さな共通点みたいなものを「僕らはいつも傘を差さない」という詞に込めて歌っています。夏が好きなわけではないのに、その訪れとともに「今年こそは何かしなきゃ」という気持ちになるんですよね(笑)。
M.10 working@(作詞・作曲:嘉陽章悟)
ーー3人のボーカルのリレーでパッチワークをしているよう。このアルバムのエンディグにふさわしい楽曲です
嘉陽 この曲は最初から3人で歌うと決めてました。曲のテーマは、僕たちの日常の愉快なことと、感謝してること。僕はインストゥルメンタルをよく聴くので、いわゆる「トラック」を作るように、ループを少しずつ展開させていきます。歌詞も発音重視で、素材として捉えてるところがあるかもしれません。
田中 章悟の書く詞は、イメージをコラージュしたようなのが多い。
古田 そう。だから、誰がボーカルをとっても馴染む。この曲は、3人で歌うことが全然不自然じゃなかったです。
ーーアルバム『Touch』のリリースに先駆けて、9月18日から 6週間連続で配信リリース。6曲それぞれのプロモーションビデオも制作し、新たな楽曲プロモーションの試みを行いました
田中 ムービーが大変だったですね。最初は、「カフェでかる〜く」的な映像をイメージしていたんですが、どうせ撮るんだったらちゃんとやりたいと、絵コンテとか仕込んで撮影しました。そしたら、他のメンバーも頑張ってて(笑)。「拝啓」の演奏シーンがカッコいいので見てください。
古田 こだわったのは、「£2,000」の飲食シーン。「Home Party People」の原点なのでぜひ見て欲しいですね。
嘉陽 「working@」のアニメーションと、みんなの楽しそうな姿を見て欲しいです。出演している人たちはいつもお世話になっている人たちなんです。感謝の想いを込めて撮影しました。
ーー3人3用の個性が光る聴き応えのあるアルバムとなりました。それぞれこのアルバムの推しの一曲を選ぶとしたらどの曲か教えてください
田中 「Gooday」ですね。実は僕がやりたいテイストの曲なんです。生楽器とシンセの絶妙なアンサンブルが気持いいんです。章悟は天才だなって思います。
古田 マシューの「ミナモ」がいいなと。みんな一度は見たことがあるような光景が、この曲にはあるんですよね。映像をイメージしやすい、そんな曲だと思います。
嘉陽 古田さんが作った「シェルター」。優しいだけではなく、強さと男らしさも共存している曲です。
ーー30代前半、自由と責任が共存している世代。日常生活で、向き合ったことがしっかり詞となり楽曲として表現されてます。メロディーやアレンジはポップで軽快で、そのギャップがまた魅力的なんですね。みなさんは、仕事、生活、音楽。それぞれどのようなバランスで音楽と関わってますか?
田中 気持ち音楽10なんですけど、実際は仕事1、生活4、音楽5くらいの割合かな。曲作りは、必然的に週末って感じになります。夜じゃないと作れないですよね。僕にとって曲作りは修行です。
古田 僕は、仕事2、生活4、音楽4くらいです。音楽は自分にとってのライフワーク。曲作りは、過去の自分と現在の自分を比較、確認する作業なのかもしれません。
嘉陽 ジャズバーで働いているので、仕事・音楽9、生活1(笑)。好きな事しかできないんです。
ーーCDリリース記念ライブが2021年1月9日に開催されます。どんなライブになりますか?
田中 たいくつさせないリリパ(リリース・パーティー)になると思います。
古田 お客さんではなく、僕らの仲間。大きなホームパーティーのような、あたたかいライブにしたいです。
嘉陽 「HARAHELLS」のラーメン丸は、実はいとこなんです。いとこ自慢じゃないですけど、ほんと「HARAHELLS」は、凄くいいバンド。一緒にライブできるのが楽しみです。
田中 ホームパーティー感満載ですね(笑)。
ーー今後の目標を教えてください
田中 シンプルに全国区で活躍したい。それからアジアも攻めたいですね。
古田 オリオンビールのCMソングを歌いたい(笑)!!
嘉陽 ずっと音楽を続けていたい。
ーー今日は色々聞くことができて楽しかったです。インタビューの締めくくりに、読者にメッセージをお願いします
嘉陽 愉快なメンバーが集まった「Home Party People」、僕も楽しいです!!
田中 それぞれの愛し方で愛してくれたらいいと思います。
古田 凄くいいアルバムができました。みなさんの生活に溶け込める作品になっているので、ぜひ『Touch』してください。
【Home Party People PROFILE】
那覇を拠点に活動するオルタナティブ・ポップバンド。メンバーは田中秀太郎(Vo,,G, Program)、古田(Vo,B,G)、嘉陽章悟(Vo,,G, Key)。料理とお酒を愛するシンガーソングライター3人が集まり、2015 年に結成。メンバーそれぞれが作詞作曲し、ボーカルを務める。2016年7月に EP「ホームパーティー」、2018年1月 アルバム『カトラリー』をリリース。最新音源は、2020年11月リリースのセカンドアルバム『Touch』。
詳細:Home Party People Website
『Touch』Release Party 2021年1月9日(土)桜坂劇場ホールAにて開催
Home Party Peopleのセカンドアルバム『Touch』の発売を記念したリリース・パーティーが2021年1月9日(土)桜坂劇場ホールAにて開催。料理好き男子3人組の「Home Party People」、ゲストに「みんな大好きラーメン屋」のデリシャス倶楽部「HARAHELLS」が出演するだけに美味しいリリパになること間違いなし。ぜひ会場へ!!
Home Party People『Touch』Release Party
日程;2021年1月9日(土)
会場:桜坂劇場ホールA
時間:開場18:00 開演19:00
料金:前売1,500円 当日2,000円
CD付チケット3,500円*要1ドリンクオーダー
出演:Home Party People
ゲスト HARAHELLS
問合・予約:桜坂劇場098-860-9555
券売:桜坂劇場窓口・ファミリーマート各店・イープラス
ローソンチケット・チケットぴあスポット・セブンイレブ
詳細:Home Party People Website
【Home Party People/Touch 】
ARTIST:Home Party People
CD TITLE:『Touch 』
RELEASE:2020年11月13日
PRICE:2,000円(without tax)
CODE:MfO-015
詳細:Home Party People Website
CD購入:Music from Okinawa Website
ARTIST:Home Party People CD TITLE:『Touch 』トレーラー
【Home Party People『Touch』収録楽曲】
01. 拝啓 (作詞・作曲:田中秀太郎)
02. Gooday (作詞・作曲:嘉陽章悟)
03. シェルター (作詞・作曲:古田)
04. 甲州街道、歩け歩け (作詞・作曲:田中秀太郎)
05. カシオペア (作詞・作曲:嘉陽章悟)
06. ミナモ (作詞・作曲:田中秀太郎)
07. Monotonous (作詞・作曲:古田)
08. 門限破り (作詞・作曲:嘉陽章悟)
09. £2,000 (作詞・作曲:古田)
10. working@ (作詞・作曲:嘉陽章悟)
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