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2011年4月11日

砂川恵理歌インタビュー 人から人へ「一粒の種」が繋ぐリレー

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シンガーの名前を聞くだけで代表曲が頭をよぎる…宮古島出身のシンガー砂川恵理歌も、そんな歌い手のひとりだ。ある末期がん患者の言葉がもとになって作られた曲「一粒の種」。一粒の種としてでも良いから生きていきたいという思いが、砂川恵理歌の優しく深い声にのり、聞く者の心をつかむ。ライブハウスではなく、全国の学校、病院、福祉施設などでミニコンサートを開く「スマイル・シード・プロジェクト」は彼女ならではの音楽スタイル。そんな姿がドキュメント番組にも取り上げられ、沖縄の年間トップセールスにも輝いた。インタビューでは、歌との出会い、そして想いを語ってもらった。

ー「一粒の種」を聞くと、感動して涙を流す方がたくさんいらっしゃいますが、自分で歌っていて泣きそうになることもあるのでは?
実はよく泣いていましたよ。最初の一年間は涙を流しがら歌ってしまい、それをどう流さないで歌うかを克服するのに一年かかりました(笑)。今でもたまに泣きたくなって、涙ためながら流さないように頑張って歌っています。

ーそうなんですね(笑)。「一粒の種」との出会いをお聞かせください。
まず、「一粒の種」ができるまでのエピソードや歌詞を知る前に、下地勇さんから「恵理歌に歌ってほしい曲があるから、まず聞いてみて」と言われ、音源をいただきました。曲を車や人が行き交う中、外で聞いたんですけど、涙が溢れてきたんです。涙を流しながら、「この歌は、絶対私が歌いたい」って思いました。一目惚れがあるというなら、それはまさに一聞き惚れ(笑)。すぐにでも歌いたくなって、勇さんに「ライブで歌ってもいいですか?」って伝えました。
ーとても運命的な出会いだったのですね。
はい。実は「一粒の種」に出会うまで、歌手として私が何を伝えていきたいのか探せず、もがいていました。でも「一粒の種」に出会い、やっとで「これだ」って思えたんです。

ー「一粒の種」を最初に歌ったときと今とでは心境の変化など、何か違いはありますか?
私が歌うスタンスは変わっていません。私の役目は「一粒の種」という歌を繋いでくれた人たちの思いを伝えること。そこは変わらないし、変えていけないと思っています。末期ガンにおかされた中島正人さんの「生きていたい」っていう言葉が元になってできたこの曲には、彼の命に対する想いが込められています。私はその歌をいろんな方に届ける役目。そんな中、歌がどんどん成長する姿を見させてもらっている感覚があります。なんだか、この歌自体に意志があるように感じるんです。詩を書いた高橋尚子さんという看護士さんとも「本当にこの歌には意志があるね」ってよく話すんですよ。「本当に思いもよらない幸せな時間を自分たちにくれるね」って。
ー中島さんの想いがつまっているんでしょうね。
もちろんあると思います。それと、この歌自体にたくさんの人のまぶい(魂)みたいな想いが込められていて、「一粒の種」が意志を持って私たちを導いている感じがします。私はそれを追いかけている感じ(笑)。

ー砂川さんは、ライブハウスではなく病院や学校、副詞施設などでのミニコンサートという形で歌っていらっしゃいますよね。
はい、「一粒の種」を2年前にギターの弾き語りバージョンでリリースしたのがきっかけで、「スマイル・シード・プロジェクト」を始動しました。それまでの1年はこの曲をライブでだけ歌っていたのですが、その歌が持ってる深さを実感するのと同時に、聞いてくれた人が自分の人生や心境を語ってくれるような場面に出会えていることに気づいたんです。この歌を通して誰かと心が通い合う瞬間をたくさん経験しました。一方、自分が本当にこの曲を聞いてくれている人たちの気持ちに答えられているのだろうか、みんなが思う程自分はこの歌のことをわかっているのだろうかって不安も感じはじめていて。それで、スタッフと相談して、やはりこの歌はひとりひとり目と目が合う距離で届けたいと思ったんです。「来てください」じゃなくて、届けに行くんだって。そこでの出会いがまた繋がっていったり、同じ時間を共有することで、自分自身が成長できたらいいなって思いました。それが「スマイル・シード・プロジェクト」の始まりなんです。
ーそんな「スマイル・シード・プロジェクト」で歌を通した心のつながりを実感されていると思うのですが。
そうなんです。長崎の物産展でフリーライブをしていたときには、たまたま見にきていたフラダンスチーム「HulaCoCo」の先生が「教室にぜひ呼びたい」って言ってくれて。普段は日本の曲で踊ることはないのに、この歌にとても思いを寄せ、振り付けまで考えて下さったんです。一緒に舞台に立つこともあるのですが、彼女たちの踊りを見ていると、この歌を本当に深く理解しようとしてくれているのが伝わります。実はいつか一緒に海を越えてハワイでもライブしましょうって話してるんですよ。こんな風に、出会った人たちがそれぞれの方法で「一粒の種」を表現したり、広めてくれたりするのがとても嬉しいですね。

ー昨年は小学校でも「一粒の種」を大合唱されましたよね。
はい。音楽や道徳の授業で「一粒の種」を取り上げてくださったりすることも多く、そうした縁で、PTAのお母さん方や学校側から「ぜひ生で歌いにきてください」と、声をかけていただきました。子どもたちと一緒に歌うと、歌の雰囲気がガラッと変わったのにはびっくりしました。本来死を直前にした命の歌が、子どもたちの声を通すと、強い生命力を感じさせるキラッとした光のようになったんです。人の持つ声の力ってすごいんだなって実感しました。子どもたちの中には「最初は胸が苦しくなったけど、今は優しい気持ちで歌えるよ」って言ってくれる子もいました。私は歌って届けることしかできないですけど、この子どもたちがいつか大人になったときに「そういえば、こんな曲歌ったよね」って、人生を重ねていきながら、何かに繋がっていけたらいいなって思いました。

ーさまざまな施設で、いろんな境遇の方と出会い、心苦しい思いをされたこともあるのでは?
そうですね。なかには余命宣告された方もいらっしゃったりと、自分の心の整理がつかないまま歌を歌う場合もあります。でも、旅を続けていくと不思議なもので、旅で出会った人たちに救われることも多いんです。例えば、老人ホームへ歌いに行ったときに、ある親子が帰り際に呼び止めてくれて、「自分で自発的に喋れなくなっていたおばあさんが曲を聞いて『良かった』って喋ったのよ」と教えてくれました。嬉しくて、そのおばあさんに声をかけたら、「あなたのしていることには意味がある。だから、これからも続けてくださいね」って言葉を頂いたんです。こういう人たちに出会えて、幸せや元気をもらえることが、私の喜びであり、この活動を続ける意味でもあると感じています。

ー今回は、宮古島での大合唱が映画化されると聞いています。
そうですね。今回、幼稚園から90代まで合計336人の宮古島の人たちと「一粒の種」を大合唱させてもらいました。最初は、100人から多くて150人集まればいいねって話していたんですけど、私が「スマイル・シード・プロジェクト」で出会った人たちが、お別れして後も歌い続けてくれていたので、そこから繋がる人や、元々ラジオで聞いて来たよと言って来てくれる方もいました。宮古の人はおばさんや隣近所も一緒に連れてくるから、予想していた参加者数の倍以上になりました。みんなの気持ちが嬉しかったです。
ー実際に宮古島の人たちと歌ってみて、どうでしたか?
そこでも、人の声が持つ力に身震いするほど感動し、涙が出そうになりました。でも、撮影もあるし録音もするから、頑張って我慢しましたよ(笑)。人の声が持っている力とそれぞれの大切な人への気持ちが「一粒の種」に加わって、本当に感動的でした。歌い終わってから泣き出す子とかもいて、そのくらい人の持ってるパワーに圧倒されました。この歌は、宮古島の先輩たちが繋いで生まれた歌だから、一度はこの歌を宮古の島の人たちと歌って、宮古の地に返したいという気持ちがずっとあったんです。そうしたら、今回たまたま映画のお話があって、夢が叶った感じ。こんな形で夢が実現したのもこの歌自体に意志があるからじゃないかって実感しました。次は日本全国の人たちと一緒にこの歌を大合唱してみたいなと思っています。それも歌の力が叶えてくれるんじゃないかと期待しています。


ー最後に沖縄LOVEweb の読者へ一言お願いします。

私は「一粒の種」を丸3年色んな場所で歌わせてもらってきましたが、そこにいる人たちと繋がる瞬間を一番間近で、そして先頭で見てきました。この歌を通して、とても温かい気持ちになり、命の尊さを実感しています。みなさんにも、命の繋がりや自分の大切な人との絆を感じてもらえたらすごく嬉しいです。

ドキュメント映画「一粒の種 ~真太陽の島の大合唱~」特別上映会
日程:4月16日(土)〜5月8日(日)
場所:シネマパニック宮古島
沖縄県宮古島市平良西里261-2
詳細:上映に関する詳細は、シネマパニック宮古島ホームページよりご覧ください。
出演:砂川恵理歌、下地勇、高橋尚子、宮古島市民の皆さん
監督:青木亮
問合:シネマパニック宮古島 TEL.0980-75-3215


【砂川恵理歌/一粒の種のアルバム】
ARTIST:砂川恵理歌
CD TITLE:『一粒の種のアルバム』
RELEASE:11年4月20日
PRICE:2,800円(tax in.)
CODE:YRCN-95153


【一粒の種〜命のうた、見送りのうた〜】
AUTHOR:砂川恵理歌/中島正人/高橋尚子/下地勇
BOOK TITLE:「一粒の種〜命のうた、見送りのうた〜」
RELEASE:11年1月22日
PRICE:1,000円(tax in.)
PUBLICATION:ヨシモトブックス

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