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2011年6月3日

「地域の魅力を見出し発信する 企画力とコラボレーション術」レポート

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伝統産業や日本古来の文化を大切にし、現代のライフスタイルにあったプロモーションや商品開発などで地域ブランドを確立している京都。地域の魅力である様々な歴史や文化を、分かりやすく伝え、ブランディングを成功させるためには、企画力とコラボレーション術が重要なキーポイントとなります。

沖縄音楽活用型ビジネスモデル創出事業において第三回目に開催する講演会で、「和傘×照明デザイン」や「京都市×着物×東京ガールズコレクション」、「サントリー緑茶伊右衛門×京友禅千總×カフェ」など京都の魅力を県外、そして世界へアピールするためにさまざまな事例を手がけてきた株式会社クリップの島田昭彦氏をお迎えし、地域ブランド確立のヒントを探りました。


会場となった沖縄県立博物館・美術館には、沖縄音楽関係、広告代理店、県内企業、行政関係、そしてクリエイターと、80名強の方々にお集り頂きました。講演では、家紋をデザインする職人の家に育った島田氏が、京都を中心に、人、モノ、コトをクリップするに至った経緯を写真を交えて話してくださったほか、地域の魅力を再認識し、どのような切り口でアピールしていくのか、また自社だけでなく他企業、商品、文化のコラボレーションによる新しい価値の創造について、実例を交えながら和やかなムードで解説いただきました。


現場100回、フットワーク良く、好奇心を大切にする
京都の職人気質の家に育ち、もっと広い世界が見たいと上京した島田氏。大学在学中は、スペインのサグラダファミリアや、中国の万里の長城、アメリカへNASAのロケットを見に行くなど、好奇心の赴くままに世界各国を見て回ったとか。島田氏が強調したのは、インターネットやテレビが普及し、情報社会になっている今だからこそ、現地で感じる肌感覚を大切にすべきということ。実際に足を運ぶことで、文字や写真だけでは収集しきれない、さまざまな情報を仕入れることが出来るからだと話します。アイディアの引き出しを増やすためにも、現場で体感して得る事を大切にするため、現場100回主義でフットワーク良く、好奇心を持って活動することが大切だと話します。


ものの見方を柔軟に変え、着眼点や発想の転換を行う
その後、島田氏はNumberの編集部に入り、新たな読者層を開拓するため、スポーツそのものにスポットをあてるのではなく、スポーツ選手が活躍する背景にあるものにスポットをあてます。例えば、スポーツ選手がどのような信念を持って競技に取り組んでいるか、またオフの時間に見せる表情…など、スポーツ選手の人間性やライフスタイルにスポットあてた展開により、これまでスポーツに興味の薄かった女性ターゲットの関心を惹き付けました。
このように、多くの人に「知られる」ためには、直球ストレートな伝え方だけでなく、その周囲から見える側面を上手に取り込むことで、これまで届きにくかったターゲットにリーチできると話します。

作る力1に対し、伝える力は5倍
島田氏の手がけたプロジェクトで、特筆すべきものが、京友禅のアロハ「Pagon」。高度な制作技術を誇る京友禅は、着物文化の衰退と共に徐々に活路を失いかけていました。そんな窮地を脱したのが、京友禅の染工場のである「株式会社 亀田富染工場」。
京友禅をアロハに仕立て上げ、販売を開始しました。
発売当初は「そんなん売れるかいな」と地元の人からは不評を浴びたといいます。しかし、そんな彼らの予想とは反し、Pagonは人と違った個性をアピールしたいと感じている、ミュージシャンやタレントからの好評価を得ました。その評判は海を渡り、NYに住むオノ・ヨーコ氏の耳に届き、わざわざ京都まで買い求めに来るほどの影響力を与えました。雑誌「BRUTUS」への掲載、テレビでの紹介、衣装提供など思った以上の反響を奏した裏側には、ひとつの哲学が…。
「作るエネルギーを1としたら、伝えるエネルギーは5倍」。大抵の場合、もの作りに携わる多くの企業は、良い商品を作る=売れる商品という図式を描くもの。しかし島田氏はそれ以上にその魅力を伝える事がヒットの秘訣だと語ります。
「Pagon」の場合、ムーブメントの火付け人でもある数多くの芸能人やミュージシャンに、出来上がった商品をプロモーションし、気に入ったら彼らの出演する場で着用してもらうという戦略を実施。そして使い手の声にひとつひとつ耳を傾け、商品を改善することを重ねました。それだけにとどまらず、染工場の一角に「お化け屋敷」を特設し、職人の手で染め荒れた京友禅の生地を会場内に散りばめ、楽しみながら友禅の魅力に触れるというユニークな試みも。こうした伝える努力を重ねる事で、「pagon」=京友禅アロハという認知度を高め、商品の魅力を伝え続けたのです。


伝統とモダンの融合 伝統は革新の連続である
京友禅と同じく、和傘もライフスタイルの変化により衰退の危機に陥った伝統工芸産業のひとつ。年収100万円という窮地を救ったアイディアは、古いものを新しいものに転用させ、新しい価値を生み出すというものでした。島田氏が竹と和紙を用いた和傘作りの職人に引き合わせたのは、照明デザイナー。傘として販売するのではなく、全く別の商品に展開することで別のチャンネルへの展開が可能となりました。そしてここで特筆すべきなのは、この商品を京都で販売したのではなく、京都から遠くはなれた場所で展開することで、クール・ジャパンに興味のある海外から高い評価を得る事になりました。また傘の性質上、折りたたみが出来る事、竹と和紙という素材も注目を集めるポイントとなったのです。
こうした伝統とモダンを融合させた革新的な取組みが、新しい伝統を作り上げていくのです。


このランプシェードをインテリアの要素として取り入れたのが京都のホテル「THE SCREEN」。個性豊かな13室のインテリアは、13組のクリエイターによるもの。島田氏がプロデュースした1室もあります。
海外のお客様が、和を感じつつもゆっくりとくつろげる空間を演出するため、ベッドを採用した和モダンなインテリア。中には8部屋を制覇したという海外のお客様もいるほど。誰のために、何をつたえたいか…。しっかりとしたコンセプトの中に、伝えるべき相手に、より伝わりやすい方法を選ぶことこそが、成功の秘訣なのかもしれません。


伝統とモダンの融合として紹介する2例目は、「IYEMON SALON KYOTO」。条室町で創業450年の歴史を持つ京友禅老舗メーカーである「千總(ちそう)」の1Fに設けられた、肩肘を張らずに日本茶を楽しめる空間として、外国人の方はもとより、観光客、ビジネスマン、OLと幅広い方々に愛されています。これまでお茶の極みといえる「茶道」と、日常生活の一部である「お茶」の中間層の新しい提案として「IYEMON SALON KYOTO」は、美味しいお茶の飲み方を学び、楽しむ事ができる和モダンな空間を提供しています。店内には、日本の伝統文化を感じさせる庭園を残しつつも、フリッツ・ハンセンのスワンチェアを採用するなど、北欧ミッドセンチュリー的な要素が取り入れられています。島田氏は、時代のライフスタイルを読み取り、伝統をモダンに仕上げるには「伝統を2割、モダンを8割」という法則があると話して下さいました。


人脈を大切にする

島田氏が数多くの事例で共通して大切にしてきたことは、人脈。ひとりで出来ることはかぎられていても、様々な人がプロジェクトに関わりあうことで、新たな可能性が生まれます。それぞれの専門分野に長けた人材をいかにコーディネイトできるかも成功のカギ。日々の生活の中で、いかにネットワークを広げ、新しいコラボレーションによる可能性を生み出す事ができるかが、重要なポイントになってきます。島田氏の著書「デキる人は皆やっている 一流の人脈術」(島田昭彦・著、明日香出版社、1,500円/税別)では島田氏が日ごろから心掛けている、ネットワークの作り方を具体的に紹介しています。是非参考にして日ごろのワークスタイルに取り入れられることをお勧めします。また全講演内容は下記のUSTREAMでも配信中です。


【講演者プロフィール】
島田 昭彦 Akihiko Shimada/株式会社クリップ代表取締役
京都出身。日経ホーム出版社「日経トレンディ」、文芸春秋スポーツ総合誌「Number」のスポーツジャーナリスト、WOWOWのスポーツプロモーションを経て、独立。現在は、J-WAVEコメンテーター、雑誌連載、地域再生をテーマにしたビジネスサミット講演、京都造形芸術大学特別講師など多数のメディアを舞台に活躍。多数の海外経験と人脈、ユニークな発想と感性をベースに、地域資源をリノベーションし、世界に発信するプロデューサーとして活躍。自身が京都に代々続く家紋デザインの家に育ったこともあり、「from KYOTO」と題して、京都のよきものを全国に、そして世界に発信するプロデューサーとしても活躍。京都と東京の文化の架け橋となり、京都商工会議所のKYOTO&フィレンツェビジネスマッチングをはじめ文化事業、ワインソムリエの資格を生かし、衣食住遊のスタイル提案などマルチな才能を発揮している。著書に明日香出版社発行の「デキる人は皆やっている一流の人脈術」。

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