2019年10月20日
韓国が国を挙げて毎年開催しているインディーズ・ミュージックのショーケース・フェスティバルそれが、Zandari Festa。今年も9月26日(木)〜29日(日)の4日間開催されるということで最終日の29日、現地へと飛んだ。今回は、沖縄のアーティストたちに海外へのアプローチの可能性を広げるMusic from Okinawaの取り組みと、昨年に引き続き沖縄から参加したHARAHELLSを中心にまとめた。Zandari Festa 2019 REPORT「Music from Okinawaの取り組みとHARAHELLS」、ご一読ください。
Music from OkinawaとZandari Festa
Music from Okinawaは沖縄の音楽を海外に発信することと、沖縄とアジアの音楽ネットワークを構築することを目的に2014年にスタートした。Zandari Festaには、海外のdelegatesがかなり多く参加しており、音楽を海外に発信する入口としては、非常に入りやすいという理由から2015年から参加している。初年度の2015年は、サイトやワークショップなどを通じて、Zandari Festaへの応募を後押をし、2016年には、jujumo、タテタカコ、ハシケンといったアーティストがMusic from Okinawaの告知を通して応募し、出演を果たすなどZandari Festaに対する実績を着々と積み上げてきた。
Music from Okinawaの代表の野田氏はZandari Festaについてこう語る。
「今年は沖縄からだけで6組の応募があったと聞いています。その中から通ったのはHARAHELLSだけでした。Zandari Festaのプライオリティーは非常に高くなっています。それは参加するDelegatesが、皆本気でバンドを探しに来ているから。HARAHELLSのショーケースには、アメリカのSXSWや中国のMIDIフェスティバルなどの責任あるディレクターが来て、最初から最後まで通して聴いてくれました。そうした根回しはこちらでもやりますが、何よりバンドの音楽に魅力がないと実際にはなかなか足を運んではくれません。それだけHARAHELLSは注目されているということです。何かきっかけがあれば一気に爆発するかもしれない、多くの人の心を動かす予測不能なサムシングがあると思います」。
沖縄のバンドで海外マーケットを視野に入れる人はまだ少数派だ。HARAHELLSのように自分たちの意思で海外を目指しているバンドにとって、Music from Okinawaのサポートは心強いに違いない。実際HARAHELLSは、昨年のZandari Festaでカナダで開催される音楽とアートのフェスティバル「Sled Island Music & Art Festival」のエグゼクティブ・ディレクターの目に止まり、その場で出演を打診され、今年の6月に出演した。
「Music from Okinawaとしても、HARAHELLSと一緒に、わかりやすい成功例を示したい。そのことで後に続くアーティストのハードルも下がると思います」と野田氏。
Music from Okinawaは、海外フェスの参加や紹介の他にも沖縄県内において、アジアの音楽ネットワークの構築を目的としたカンファレンス『Trans Asia Music Meeting』を企画・運営している(次回開催は2020年2月予定)。加速度的に変化している世界の音楽環境、その潮流をつかみとり、行動につなげるためにもMusic from Okinawaの取り組みに注目し、機会を逃さず参加することをお勧めしたい。
Zandari Festa 2019
韓国、ヨーロッパ、アジア、北米、南米の新興アーティストが、ホンデ・エリアの主要なライブ・ハウスやクラブで開催期間中連日連夜ライブパフォーマンスを繰り広げる。ショーケースを通じて才能を発揮し、世界各国から集まったDelegatesにアピールし、アーティスト自ら海外の活動の場やマーケットを開拓しているのだ。ジャンルもロック、パンク、オルタナティブ、エレクトロニックなど、多種多様。まさに韓国版SXSW、それが「Zandari Festa」だ。2019年は、9月26日(木)〜29日(日)の4日間開催され、20カ国118組の公式ショーケースが開催。沖縄からは、昨年に引き続きHARAHELLSが招待参加した。
HARAHELLS in Zandari Festa 2019
2019年9月29日(日)HARAHELLS 18:10-18:50 @PRISMHALL
HARAHELLSのライブは、スタンディングで200名は入りそうなキャパのライブハウスPRISMHALLで行われた。韓国にファンクラブがあるというだけあって、ライブ開始の前からオーディエンスがライブハウスに続々と集まってくる。1曲目は「デリシャス倶楽部」。新研究生として加入して間もないGt&Choにもろこし亭 妹子をアイコンタクトでリードしながら歌うDr&Voラーメン丸。韓国のファンにも人気の曲らしく、ラーメン丸と一緒にハミングしていて、海外というアウェー感は全く感じられない。3曲目の「セルライト」、タイトルに反応していたシンガポール人(インタビュー後国籍は確認)のオーディエンスがいたのですかさず感想を聴いてみると「KAWAII」と言ってくれた。どうやら、HARAHELLSのアプローチ、世界観を理解しているらしい。カンペを見ながら、たどたどしい英語でのMC、一生懸命さがオーディエンスに伝わって応援する空気感ができあがっている。この姿勢、コミュニケーション能力がHARAHELLSの海外での強さだと言える。ラストの曲「のーまんじゅうのーらいふ」まで全7曲、HARAHELLSらしく、ほのぼのとたんたんとポフォーマンスは続いた。韓国のファンも笑顔を絶やさずほのぼのグルーヴでHARAHELLSのパフォーマンスを支えた。
ライブ終了後の物販でもファンの行列ができていて、購入者との記念撮影を楽しむなど、海外で新たなファンも獲得できたようだった。Zandari Festaの翌日には、韓国のバンドとファンと沖縄のバンドのサポートで自主企画イベントも大成功させた。
日本を全面的に出した浴衣の衣装、ほのぼのとした独特の音楽観と世界観、たどたどしいHARAHELLS流ジャパニーズ・イングリッシュを武器に、海外の音楽関係者をどんどん巻き込んでいくに違いない。HARAHELLSのこれからに目が離せない。
HARAHELLS Live in Zandari Festa 2019@PRISMHALL Set list
1.デリシャス倶楽部 2.野菜地獄 3.セルライト 4.モンスターマシンズ
5.腹痛行進曲 6.893のおうち 7.のーまんじゅうのーらいふ
HARAHELLS INTERVIEW
ーー2回目のZANDARI FESTA、PrismHallでライブを終えた感想を
ラーメン丸 今回は前回より会場が広く、ステージも高く、ドラムが動かせずギターとの距離もあったので、ふたりのコミュニケーションが取りづらくて、少し不安や緊張が出てしまいました。お客さんとの距離も遠かったので反応が分かりづらく、今までの海外ライブに比べると、正直手応えは薄かったですね。それでも、気にいってくれて声かけてくれたり、CDやグッズを買ってくれた人がいたので、本当に嬉しくてありがたかったです。あとは、もうちょっと韓国語や英語を話せるようになって、少しでもお客さんとのコミュニケーションが取れたらとは思います(今回も全然勉強間に合わなかったのですが)。
もろこし亭 妹子 頭も技術も追いつかないまま立ったZandari Festaのステージでしたが、観客のみなさんをみていると緊張より楽しさが勝るライブができました。終演後も韓国の方だけでなく色んな国の方が話しかけてきてくれたのも嬉しくて、またZandari Festaに出演したいと強く思いましたし、せめて英語は喋れるようになろうと思いました。色んな国のバンドを観れる機会はなかなかないのでとてもいい経験になりました。今回より成長した姿でまたみなさんにお会いしたいです!
ーー韓国のファンクラブができたキッカケを教えてください
ラーメン丸 一番最初は2018年2月の高円寺でのライブを偶然見てくれたのがキッカケです。そして昨年のZandari Festaでのライブを見にきてくれて、韓国に行くたびに、イベント協力してくれたり美味しいお店につれて行ってくれたりお世話になってます。
ーーZandari Festaの翌日に自主企画ライブを行いました。韓国のバンドメーンバーもいろいろサポートしてくれたようですね
ラーメン丸 一ZanadariFesta出演の翌日にstrangefruitsで自主企画を計画していたのですが、そこでの対バンに韓国のバンドDrinking Boys And Girls Chairを誘いました。 ですが、メンバーの都合で出演は出来ず、他に日程の合うおすすめの韓国バンドを探してやりとりをしてくれました。あとは韓国語以外にも日本語・英語も話せるので通訳を手伝ってくれたり、車で機材運びを手伝ってくれたり、とても助かりました。ちなみに彼とも去年のZandariFestaで出会い、韓国へ行くたびに私達のライブに会いに来てくれて、沖縄に遊びに来てくれた時も遊んだりする飲み仲間です。
ーーstrangefluitでのライブはいかがでした?
ラーメン丸 沖縄からHARAHELLSと春はあけぼの韓国のバンドでBATU、そしてモンゴルのGROWL OF CLOWNの4組でライブを行いました。
もろこし亭 妹子 一番印象に残ったのは、MVにもなっている「デリシャス倶楽部」(ラーメンの歌)を演奏中、冒頭「パララーララ…」歌い出すとみんなが一緒に大合唱してくれたことです。あれには驚いて、ブワーッと鳥肌がたち泣きそうになりました。
ラーメン丸 沖縄から共に連れて行ったSKAバンド「春はあけぼの」とのコラボ演奏で豪華版「のーまんじゅうのーらいふ」を演ったり、朝鮮民謡をアレンジして演ったらとても喜んでくれて、一緒に歌って踊ったりもしてました。strangefruitsはアットホームな雰囲気で居心地が良く、お客さんとの距離が近いのでとても演りやすくてお気に入りの場所です。毎回良い時間を過ごせてます。
ーーHARAHELLSにとっての海外ライブとは
ラーメン丸 ダイレクトに反応を実感出来る良いチャンスだと毎回思います。日本人はシャイな方が多いのですが、海外のお客さんはとても感情の表し方が素直で、良いライブをすると純粋に気持ちを表して思いっきり盛り上がるので気持ちがいいです。逆にこちらがあまりハマったライブが出来ないと、それなりの反応で返ってくるので厳しくもありますが(笑)。お客さんに伝わっているのか、伝わりきれてないのか、がすごく分かりやすいので面白いです。その土地の言語が話せなくても、ライブで私達の事を知ってもらえると、気に入ってくれたら単語やジェスチャーでも仲良くなれたりします。あとは単純に、地元では見れない風景や人の感じ、ご飯やお酒だったり、日常では味わえない物事を味わえる刺激があって、楽しいです。その国の事を好きになると同時に、日本や沖縄の事を改めて好きになりますね。
ーーこれからもがんばってください!
HARAHELLS ありがとうございます!!
【HARAHELLS Profile】
沖縄県産空腹地獄バンド、ハラヘルズ! 2013年より活動。 2019年、セカンド・ミニアルバム『デリシャス倶楽部』をリリース。Gt&Choにもろこし亭 妹子が新研究生として加入! 現在、Drs&Voラーメン丸ともろこし亭 妹子の2ピースで活動中!!
詳細:HARAHELLS Website
HARAHELLS twitter
HARAHELLS Live Informations
2019年10月19日(土)@騒音舎(NEOPOGOTOWN)『騒音祭』
2019年11月30日(土)@コザ『争無音芸祭』
HALL:PRISMHALL BAND:SIDECAR(KO)/Drinking Boys And Girls Chair(KO)
HALL:MUV HALL BAND:BOHEMIAN BETYARS(HU)
HALL:VELOSO BAND:LUST(MY) HALL:FLEX.LOUNGE BAND:Rare Americans(CA)
SPECIAL PROGRAM:SOUND CITY KOREA by Fred Perry Subculture Live from UK
HALL:MUV HALL BAND:The Sherlocks/Too Many T’s/The Tea Street Band/TXT/WOOZE
【Zandari Festa 2019 あとがき】
今年も「LISTEN TO MUSIC! DRINK BEER! MAKE FRENDS!!」のキャッチコピーにのせられ少々呑みすぎたが、濃密な体験ができた。ここ数年、韓国のインディーズ・アーティストやロック・バンドたちがアメリカ、イギリス、ドイツ、フランスなどのヨーロッパ、そして日本、中国などのアジア圏にまで進出している。このムーブメントに「Zandari Festa」も大きく貢献している。フェスには、いくつかオフィシャルのスペシャルプログラムがある。フォト・リポートに最後に掲載した、イギリス・リバプールで開催される5万人規模のフェス「Liverpool SOUND CITY」のオフィシャル・ショーケース「BRITISH NIGHT:SOUND CITY Korea」。この取り組みによって「Zandari Festa」と「Liverpool SOUND CITY」の音と人的交流が生まれている。事実、毎年韓国からは、「Liverpool SOUND CITY」に派遣され、それをきっかけにヨーロッパツアーを実施するバンドも増え続けているのだ。最終日に開催されたそれは、文字通り「LISTEN TO MUSIC! DRINK BEER! MAKE FRENDS!!」であった。
世界の潮流に遅れをとってはいけない。国や県、地域と企業がタッグを組み音楽シーン育て、賑わいと経済活動と新文化構築できるシステム(機構)づくりが今後の沖縄の音楽シーンの大きな課題だ。その礎を築こうと奮闘しているMusic from Okinawaの取り組みにぜひご注目&ご協力いただきたい。私個人としても微力ではあるが、今後も協力を惜しまないし、意見交換を続けながら沖縄音楽シーンの発展のために尽くしたい。
ー沖縄カルチャーの広告塔 幸田悟ー
平成31年度 沖縄文化芸術を支える環境形成推進事業
支援:沖縄県・公益財団法人沖縄県文化振興会
Music from Okinawa Facebook page
Trans Asia Music Meeting 2020|2019年2月開催予定
Zandari Festa 公式サイト
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