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2018年10月15日

世界のバンド・サウンドを体感のショーケース|Zandari Festa 2018 REPORT

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アーテイスト自ら海外の活動の場やマーケットを開拓! 韓国版SXSW、それがZandari Festa!!
LISTEN TO MUSIC! DRINK BEER! MAKE FRENDS!!

【Zandari Festaとは】
「Zandari Festa」とは、韓国が国を挙げて開催するインディーズ・ミュージックのショーケース・フェスティバル。韓国、ヨーロッパ、アジア、北米、南米の新興アーティストが、ホンデ・エリアの主要なライブハウスやクラブで開催期間中、連日連夜ライブ・パフォーマンスを繰り広げる。ショーケースを通じて才能を発揮し、世界各国から集まったDELEGATEたちにアピールし、アーティスト自ら海外の活動の場やマーケットを開拓しているのだ。ジャンルもロック、パンク、オルタナティブ、エレクトロニックなど、多種多様。まさに韓国版SXSW、それが「Zandari Festa」だ。

2018年は、10月4日(木)〜7日(日)の4日間開催され、韓国国内から63組、海外から45組のバンドが出演。沖縄からは、HARAHELLS、Funnynoise、マルチーズロックの3組が選ばれたが、残念ながらマルチーズロックは、台風25号の影響で参加が見送られた。

【Zandari Festaの開催の地、韓国へ】
韓国ソウル・ホンデで開催中のZandari Festa。本来4泊5日の行程だったが、私自身も台風の影響でやむなく1泊2日のショートバージョンへと変更を余儀なくされた。短い滞在だが、世界のバンド・サウンドの潮流を肌で感じたいと思う。
2018年10月7日(日)11時40分、那覇空港国際線ターミナルに到着。それから搭乗手続きを行い、出国ゲートへ。13時50分発のJin Air LJ 246便にて韓国仁川空港へ。予定通り16時15分に到着、入国審査を経て空港鉄道の各駅に乗車し18時にZandari Festaの開催の地、ホンデのHongik Univ.駅に到着。現地の気温は18℃。沖縄は28℃だったから10℃の気温差だ。

【Zandari Festaの開催地ホンデとは】
「Zandari Festa 2018」は、ホンデ・エリアで開催される。ホンデには、韓国を代表する美術家やデザイナーを多数輩出してきた韓国でNo.1の実績を誇る美術大学「弘益(ホンイッ)大学」があり、アートや音楽などの創作活動を行う若者たちが集まるサブカルチャーの発信地。クラブやライブハウスも多く、深夜まで賑わいを見せるエリア。東京で言えば下北沢、沖縄で言えば沖縄市のコザと北谷町美浜を足して二で割ったようなそんな街。「Zandari Festa」がホンデで開催されるというのもうなずける。

【Zandari Festaプロローグ】
韓国に到着するなりアクシデント発生。宿泊予定だったホテルが、手違いでキャンセルとなり部屋が空いてないという。土地勘がないので、ホンデ近辺で宿泊可能なホテルをスタッフと一緒に探す。ちょうどひと部屋空きが見つかり、そのホテルを予約。スタッフのホンさんが、ホテルまで車で送ってくれた。ありがとう、ホンさん。こういうトラブルも旅にはつきもの。驚いたり、喜んだり、なんともエモい旅のはじまりだ。

Zandari Festaの舞台となるエリアの最寄駅、Hongik Univ.駅を駆け上がった瞬間から、エネルギーを感じる。歩いている人たちが圧倒的に若いし、街全体に音楽が溢れている。通りの空き地では、ストリートライブやダンスのパフォーマンスが行われ、通りすがりの若い人達が足を止め、思い思いに楽しんでいる。「Zandari Festa」のインフォ・パックの表紙のキャッチコピー「音楽を聴き、ビールを呑み、友達を作る!!」がふと頭をよぎる。郷に入っては郷に従え。LISTEN TO MUSIC! DRINK BEER! MAKE FRENDS!! ここからは、頭で考えず、音楽を感じ、ビールで乾杯しながら、フェスを楽しむことにする。

【Zandari Festa 2018 REPORT】
■Place:The Stage Artist Lounge
現地時間19時にZandari Festaのアーティストラウンジ「The Stage」でMusic from Okinawaの野田氏と合流し、アーティストパスを入手、いよいよホンデのナイト・タウンをライブハウス・サーキットだ。

■Place:Rolling Hall ■Artist:JAMBINAI(韓国)
まず最初に向かったのは、「JAMBINAI」が演奏する「Rolling Hall」。
現代音楽の潮流のひとつである実験的音楽、エクスペリメンタル・ミュージックを奏でる韓国のバンドだ。彼らは、韓国伝統音楽の「国学」をポストロックと融合させながら、独自の世界観を表現している。2013年には、韓国音楽賞でベストクロスオーバーアルバム賞を受賞。また2018年にピョンチャンで開催された冬季オリンピックの閉会式では、オーケストラと共演。もちろん、SXSW(アメリカ)やGlastonbury Festival(イギリス)を始めとした世界各地のフェス出演なども果たしている。実績、知名度、実力とも兼ね備えたバンドの出演とあって、会場の「Rolling Hall」は満員、さすがの集客力である。ガムムンゴ、ヘグムといった韓国の伝統楽器が奏でる、揺らぎのあるアナログなメロディーをエレキギーターやドラムなどの西洋の楽器が、ポリリズムを多用した幾何学的ロックサウンドで包み込む。オーディエンスは「JAMBINAI」が生み出すサウンドにグイグイ引き込まれていた。重低音(耳に聴こえない超低周波帯域も含む)をしっかりと再生する充実したサウンド・システムが彼らの世界観をしっかりとサポート。ビールが無くてもトランスできる素晴らしいライブだった。

JAMBIN AI잠비나이 「Connection」

▶︎JAMBINAI Website

■Place:Evans Lounge ■Artist:Gunner & Smith(カナダ)
次は、カナダのバンド「Gunner & Smith」が演奏する「Evans Lounge」へ。大きな身体、髭モジャな男たちのスリーピースバンド。ルックスからしてZZトップのような渋めのブギー・ロックをイメージしたが、カナディアン・フォーク & カントリー・ロック的なサウンドであった。「Gunner & Smith」は、2014年にフルアルバム『He Once Once A Good Man』をリリースして以来、バンドは北米全域を何度もツアーを敢行するなど実績はかなり積んでいる。歌詞を大切に、時に哲学者のように語りかけるボーカル・スタイル(ピッチの揺らぎはこのバンドに関してはアジとしてとらえなければならないだろう)、一音一音を丁寧に発するライブパフォーマンスには好感が持てた。しかし、会場の「Evans Lounge」に集客ができていないのが、とても残念でならない。こういう国際的なショーケースに参加するにあたっては、バンド自身のライブ・プロモーション、現地のお客さん達とのコミュニケーション、そしてバンドとしての方向性を分りやすく伝えるセルフ・プロモーション能力が不可欠だ。テーマが難解な音楽であればなおさら、バンドの特徴を分りやすく伝えられなければならない。そんなことを再認識させてくれたライブだった。

Gunner & Smith「The Barrens」

▶︎Gunner & Smith Website

■Place:Club FF ■Artist:Browsing Collection(スウェーデン)
続いて向かったのは、スウェーデンのガールズバンド「Browsing Collection」のライブ会場「Club FF」。会場に辿り着くとすでにライブは、スタートしていて、会場はヒートアップしている。ハード・ロックのライブ特有の激しいヘッドバンキング! でもその表情をみると笑顔なのだ。これこそが、このバンドの特徴。2008年結成の「Browsing Collection」、オフィシャルサイトによれば「パンクの姿勢とメタルの影響を受けたキャッチーなハードロック」とある。彼女らは、ハードロックをこよなく愛し、楽曲そのものがキャッチーであり、ライブを心から楽しんでいる。その姿がとてもチャーミング! ひとたび彼女らが音を奏でると、オーディエンスは、笑顔で頭を振り、拳を突き上げて盛り上げたくなるのだ。シンプルで分かりやすいコンセプトは、言葉が通じずとも伝わるものだ。地元のファンをしっかり獲得しているのもうなずける、そんな「Browsing Collection」のライブ・パフォーマンスだった。

Browsing Collection「Thank God It’s Friday」

▶︎Browsing Collection Website

■Place:Muv Hall ■Artist:Crying Nut(韓国)
パンクバンド「Crying Nut」のライブは、大箱の「Muv Hall」で行われていた。1998年にアルバムデビューした、韓国のパンクシーンにおいて絶大な影響力を持つバンド。彼らは2002年FIFAワールドカップの公式の韓国チームのテーマソングを担当するなど知名度においても申し分ない。ライブ会場に足を踏み入れた瞬間、懐かしい空気感に包まれる。その理由は、今年ハタチを迎えた沖縄のモンスターバンドMONGOL800のライブの空気感にどことなく似ているものを感じたからだ。音楽のスタイルではなく、そこはかとなく伝わるハッピー感とでも言おうか、ライブを観ていて心が弾んでくるのだ。韓国は沖縄と同様、哀しい民の歴史を乗り越えてきた。そんなメッセージソングもありながらも、最終的には清涼感を感じる、後味の良いライブであるところもモンパチのライブと共通しているように思う。サウンドは、キム・インスのアコーデオン&キーボードがとてもスパイシー、このバンドの屋台骨を支えているかのような圧倒的な存在感だ。ライブは、もちろん盛り上がった。アフターパーティーでキム・インスと話をしたら、「モンパチは友達。11月に彼らのフェスに出演する」とのこと。沖縄に帰って調べてみたら「MONGOL800 ga FESTIVAL What a Wonderful World!!18」の2日目、11月4日(日)に出演するではないか! がぜんWWW!! 18も楽しみになってきた。

크라잉넛 CRYING NUT「’구닥다리 멜로디 Old School Melody」

▶︎CRYING NUT Website

■Place:Veloso ■Artist:EYRE LLEW(イギリス)
ライブサーキットのラストを飾るのは、イギリスのバンド「EYRE LLEW」のライブ。ノッティンガム出身の3人組のアンビエント・ロックバンドだ。これまでに9枚の自主制作シングルをリリースし、2017年10月、ファースト・フルアルバム『Atelo』を発表している。最初に見た「JAMBINAI」もそうだが、ポストロックがここにきて、再び息を吹き返しているように感じる。「EYRE LLEW」の最大の特徴は、なんといっても美しいメロディーとインテリジェンス溢れる構成。アンビエント系のバンドにありがちな、観客を置き去りにする自己陶酔型のパフォーマンスではなく、主題と意図をハッキリと提示しながらも幻想的な空気感を創り上げているのだ。美しくもエモーショナルな彼らのサウンドは、多くの共通言語をもってリスナーを感動の世界に導いていく。「EYRE LLEW」のライブは、ぜひ多くのバンドマンにも体感してもらいたい。

Eyre Llew 「Mortné」

▶︎EYRE LLEW Website

■Place:Muv Hall ■After Party
ライブは22時30分にすべてが終了し、出演アーティストや関係者が集うアフターパーティーへ。「Zandari Festa」のコン・ユニョン(エグゼクティブディレクター)代表の挨拶でスタート。アフターパーティーが始まるや否やあちらこちらで乾杯の声。残念ながら台風の影響で沖縄アーティストのライブを観ることはできなかったが、大きな収穫があったフェス参戦だった。

それにしてもこのフェスのキャッチコピー、「LISTEN TO MUSIC! DRINK BEER! MAKE FRENDS!!」は素晴らしい!! その言葉通り、私もたくさんビールを呑んだ。ビールを吞んだ数以上に、たくさん音楽を聴き、感動し、楽しみ、そしてたくさんの友達ができた。コン・ユニョン代表をはじめ、ライブを観て感動した海外のバンドメンバーとのコミュニケーションは、勉強になったし、最高に楽しかった。沖縄から参加した「HARAHELLS」も浴衣でパーティーに登場し日本(沖縄)を武器にしっかりアピールしていたことを付け加えておきたい。

音楽とビールは、国境を越える最強タッグのコミュニケーション・ツール!!
「Zandari Festa」にありっ! 乾杯!!
ニフェーデービル、ありがとう、サンキュー、カムサハムニダ! 감사합니다!!

【Zandari Festa 2018 あとがき】
帰りの飛行機の中でこのテキストを執筆している。「LISTEN TO MUSIC! DRINK BEER! MAKE FRENDS!!」のキャッチコピーにのせられ少々呑みすぎたが、濃密な体験ができた。現地で感じた由無し言をあとがきとして記しておきたい。
「Zandari Festa」は、韓国が国を挙げて取り組んでいるライブハウス・サーキット。ここ数年、韓国のインディーズ・アーティストやロック・バンドたちがアメリカ、イギリス、ドイツ、フランスなどのヨーロッパ、そして日本、中国などのアジア圏にまで進出している。このムーブメントに「Zandari Festa」も大きく貢献している。フェスには、いくつかオフィシャルのスペシャルプログラムがある。たとえばイギリス・リバプールで開催される5万人規模のフェス「Liverpool SOUND CITY」のオフィシャル・ショーケース「BRITISH NIGHT:SOUND CITY Korea」がそれだ。この取り組みによって「Zandari Festa」と「Liverpool SOUND CITY」の音と人的交流が生まれている。事実、毎年韓国からは、「Liverpool SOUND CITY」に派遣され、それをきっかけにヨーロッパツアーを実施するバンドも増え続けているのだ。

【沖縄県文化関連の関係者のみなさんへ】
沖縄県文化関連の関係者のみなさんには、音楽的国際交流が生まれる活動の支援と戦略的な仕組みづくりの必然性、それに対する理解がさらに深まることを期待したい。

【アーティストのみなさんへ】
沖縄のアーティストに関しては、海外のマーケットへのアプローチを積極的に行って欲しい所。ひとつの考え方として音楽のビジネス的価値は自己評価で決められるものではない。当たり前のことだが、自分以外の他の人が評価してはじめて価値あるものとなる(筆者的には音楽に対し「価値云々」という表現は基本的に好きではない。しかし、こういう側面があるということもアーティストには理解していてもらいたい。本心では、すべてをのみ尽くし凌駕するようなパワフルなバンドマンたちの出現を心待ちにしている)。経験こそがすべて。海外に出る為には何が足りなくて、何が必要なのか? 自身のストロングポインとはどこなのか? 理屈ではなく実際にライブを体験することで、ひとつひとつの答えが見えてくる。そして、交流することでチャンスは生まれるし掴むことができる。
沖縄のシーンにおいては、アジアを中心に音楽の交流を地道に生み出している「Music from Okinawa」の今後の取り組みに注目していただきたい。

沖縄音楽のポテンシャルは非常に高い。
国際交流を生み出す戦略的な仕組みと素晴らしい楽曲を生み出すクリエイティブなアーティストの積極的なアクション、その両輪がかみ合った時、再び沖縄音楽は、世界に大きく羽ばたくに違いない。その実現に向けて私も全力でサポートできればと思う。

ー沖縄カルチャーの広告塔 幸田悟ー

平成30年度 沖縄文化芸術を支える環境形成推進事業
支援:沖縄県・公益財団法人沖縄県文化振興会

特別リンク

▶︎Music from Okinawa Facebook page
Trans Asia Music Meeting 2019|2019年2月開催予定

▶︎Zandari Festa 公式サイト
▶︎Zandari Festa Facebook page

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