ホーム > 沖縄音楽活用型ビジネスモデル創出事業 > 沖縄音楽旅行 > 【連載コラム】沖縄音楽の楽|又吉恭平|沖縄音楽旅行Vol.54

2025年2月21日

【連載コラム】沖縄音楽の楽|又吉恭平|沖縄音楽旅行Vol.54

,,,,

Share on Facebook

沖縄音楽の楽
琉球古典音楽野村流伝統音楽協会の又吉恭平が琉球古典音楽や沖縄民謡など、沖縄音楽の「楽しみ方」を貴重な音源や、曲にまつわるエピソードで伝える連載コラムです。
文|又吉恭平

タイトル:「琉球王朝の音色「ガク」について」

「ガク」とは
早いもので今年の正月も終わり、さらに沖縄では旧正月も終えた。加えて沖縄では旧暦に基づきその他様々な正月(廿日正月など)が行われている。

さて読者の皆さんは正月の音楽を考えるときどんな楽器を思い浮かべるだろうか。それはきっと「箏」を想像する方が多いのではないかと思う。しかしかつて琉球では箏がお正月を代表する楽器というわけではなかった。琉球最後の国王・尚泰の四男である尚順(松山王子)は自身の文章(参照『松山御殿物語』)に、正月の首里城では朝の4時から「ガク」の音が城内に鳴り響き、この音を聴くことで新たな年を迎えたと記している。

ちなみにこの「ガク」という楽器は、中国伝来の楽器で嗩吶(スオナ)とも呼ばれる。琉球・沖縄においては「ガク」、「ガク―」などと呼称され、また琉球民謡「サフエン節」の囃子に登場する「ピーラルラー」も同じ楽器の事を指している。この楽器は首里城で奏でられたほか、琉球使節が江戸に向かう「江戸立ち」の際も行列の先頭を歩く琉球版ブラスバンド「路次楽」において中心的な楽器として演奏されていた。

琉球王国が廃琉置県を経て日本の一県である「沖縄県」となった後は、王府も解体され、首里城における「ガク」の演奏はその役目を失い衰退していった。その一方、かつて首里で活躍した奏者達は地方へと散っていき、各地で「ガク」の奏法を人々に伝えていったとされている。現在では一部の地域において獅子舞や棒術などに「ガク」の演奏を聴くことができる。特に今帰仁村湧川に伝わる「路次楽」は、「ガク」の演奏をメインとした芸能として知られている。さらに近年では、しばらく途絶えていた「首里王府の路次楽」や、幻の宮廷音楽「御座楽」も復元され、「ガク」の音色は再び首里の地に響き渡っている。

「ガク」を聴く
ガクの音源はそう多くはないが聴くことができる。CD『かなすウチナー』には今帰仁村湧川の「路次楽」の音が収録されている。あくまで各地域の民俗芸能のひとつとして紹介されているわけだが、歌中心の音楽が多い沖縄においては、その演奏は特異であり、はじめて聴いたときは強烈な印象を受けた。
続くCD『幻の琉球王府宮廷楽 御座楽』は、琉球王国の終焉とともに滅びた宮廷音楽「御座楽」を研究者達が調査・研究を行い、それを基に復元した演奏を収録したものである。「路次楽」が屋外で演奏されるのに対し、「御座楽」はいわゆる室内楽である。「ガク」は両方で演奏されており、本CDでは「御座楽」における「ガク」の演奏に注目して聴いていただきたい。
CD『詩曲 響(とよむ)』(作曲:普久原恒勇)は、このコラムでも以前に紹介したことがあるが、本作品にも「ガク」が使用されている。「ガク」の音色からはかつて交易で栄えた琉球の独自の文化を感じることができ、壮大な音楽をより一層引き立たせている。

【今号のフォトアルバムキャプション】
❶首里城古式行列で「ガク」を奏でる阿波連本勇氏(2013年筆者撮影)  ❷西原町棚原 ミルク行列で「ガク」を奏でる人々(2017年筆者撮影)  ❸今帰仁村湧川の路次楽 「ガク」の奏者(2014年撮影) ❹CD『かなすウチナー』 様々な民俗芸能の中に今帰仁村湧川の「路次楽」を聴くことができる ❺CD『幻の琉球王府宮廷楽 御座楽』 復元された十数種の楽器による「御座楽」の演奏の中に「ガク」の音が響く ❻CD『民族音楽 詩曲 響(とよむ)』 現代に生まれた楽曲でありながら、琉球の悠久の歴史を感じる壮大な楽曲。「ガク」の音が効果的に用いられている

又吉恭平 PROFILE
沖縄県立芸術大学大学院音楽芸術研究科音楽学専攻修了。国立劇場おきなわ組踊研修修了生(第3期)。琉球古典音楽野村流伝統音楽協会師範(歌三線・胡弓)。現在は琉球古典音楽の演奏家として、県内、県外で活動を行っている。

沖縄LOVEweb INFORMATION


エンドユーザーに届き、しっかり伝わる情報発信! 沖縄LOVEwebへのお問い合わせ&掲載依頼はこちら!!
沖縄LOVEwebへの情報掲載


沖縄音楽旅行をWEBで! バックナンバー入手も可能!! 沖縄音楽旅行全54巻 全巻コンプリートしてください!
沖縄音楽旅行 WEB版 Back Number 一覧はこちら


BEGIN、ORANGERANGE、MONGOL800など沖縄アーティストへのインタビュー動画、随時更新!
沖縄LOVEwebTV YouTubeチャンネル


沖縄ちゅらサウンズ♪ 音源視聴・購入はQRコードから

コメントは受け付けていません。

ホーム > 沖縄音楽活用型ビジネスモデル創出事業 > 沖縄音楽旅行 > 【連載コラム】沖縄音楽の楽|又吉恭平|沖縄音楽旅行Vol.54