2024年9月3日
写真:❶左上 ❷左下 ❸右
沖縄音楽の楽
琉球古典音楽野村流伝統音楽協会の又吉恭平が琉球古典音楽や沖縄民謡など、沖縄音楽の「楽しみ方」を貴重な音源や、曲にまつわるエピソードで伝える連載コラムです。
文|又吉恭平
タイトル:「奄美音楽」
奄美音楽と琉球音楽
沖縄の人にとって「奄美諸島(以下、奄美)」という場所はどんな存在であろうか。気候や文化が似ていることはご存じかと思うが、かつて奄美が琉球王国の一部であったということを知る人は意外と少ないのかもしれない。
私が最初に奄美を意識するようになったのは、約20年前。図書館で奄美民謡のCDを手に取った時に、沖縄と同じく三線を弾く姿のジャケットが目にとまった。いざ音源を再生してみると、歌い手は男性であったが、ファルセット(裏声)を用いた高音域で歌い、また三線の調弦も高く、右手に「竹バチ」を持って演奏する奏法はどこか日本本土の三味線のようであり、それは一聴すると琉球音楽とは大きく異なるものであった。しかしその中にどこか懐かしさを感じたのは、歌における言葉の発音が沖縄と共通する部分があったからである。そんな奄美の音楽に私は心惹かれていった。
その後、様々な音源を聴いてみると、私の学んでいる琉球音楽と奄美音楽に共通点を見出すことができた。例えば、琉球古典音楽「諸鈍(屯)節」について、曲名にある「諸鈍」は奄美大島の南にうかぶ「加計呂麻島」に存在する地名である。また琉球古典音楽最古の流派「湛水流」における「諸鈍節」の本歌は「諸鈍みやらべの…(中略)」であり、歌には諸鈍集落の美しい娘たちの姿が描かれており、いわゆる「土地褒め歌」となっている。奄美の風景が琉球古典音楽において現在も歌われていることからは歴史的な深いつながりを感じずにはいられない。
一方、奄美音楽においては「越来間切」という歌があるが、タイトルにある「越来」とは、現在沖縄本島・沖縄市にある地名である。かつて此処は琉球王国時代「越来間切」という行政区画であった。そして琉球音楽には「越来節」という歌がある。この歌と奄美の「越来間切」を聴き比べると驚くほどに歌詞・旋律ともに共通していた。現沖縄市にある「越来」「山内」の地名が奄美音楽でも聴かれることから、この歌が沖縄から奄美に伝わったことは間違いないだろう。以上は一部の例にすぎないが、奄美音楽と琉球音楽の共通点を紹介する。
写真: ❹左 ❺右
奄美音楽を聴く
まず聴いてほしいのは、CD『奄美しまうたの神髄 東節の心』である。このCDには100年に1人の唄者と称された武下和平の演奏が収録されている。アルバムには「諸鈍長浜節」が収められており、その歌詞からは琉球音楽とのつながりを感じることができる。
次は、築地俊造のCD『とーとがなし』。築地は「第2回日本民謡大賞全国大会」で優勝するなど、名人として活躍した。本アルバムには前述した「越来間切」が収録されており、琉球音楽の「越来節」と併せて聴いていただきたい。
【今号のフォトアルバムキャプション】
❶「諸鈍長浜」の歌碑「Web Site 歌碑を訪ねて西東」より ❷越来節の歌碑(沖縄市山内) ❸越来節の歌碑(沖縄市越来) ❹CD『奄美しまうたの神髄 東節の心』 武下和平 ❺CD『と~とがなし』 築地俊造
又吉恭平 PROFILE
沖縄県立芸術大学大学院音楽芸術研究科音楽学専攻修了。国立劇場おきなわ組踊研修修了生(第3期)。琉球古典音楽野村流伝統音楽協会師範(歌三線・胡弓)。現在は琉球古典音楽の演奏家として、県内、県外で活動を行っている。
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