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2024年2月28日

【連載コラム】沖縄音楽の楽|又吉恭平|沖縄音楽旅行Vol.50

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沖縄音楽の楽
琉球古典音楽野村流伝統音楽協会の又吉恭平が琉球古典音楽や沖縄民謡など、沖縄音楽の「楽しみ方」を貴重な音源や、曲にまつわるエピソードで伝える連載コラムです。
文|又吉恭平

タイトル:「琉球音楽とヴァイオリン」

琉球音楽とヴァイオリンの出会い
ヴァイオリンという楽器は世界中で演奏されており「楽器の王様(女王様)」と称されることもある。クラシックで用いられることは勿論のこと、世界各地の民族音楽やポピュラーミュージックに取り入れられていることからすれば納得の名称と言えよう。

このことは琉球音楽(琉球古典音楽・琉球民謡)においても例外ではなく、少なくとも昭和初期にはヴァイオリンとの出会いを果たしている。三島わかな『近代沖縄の洋楽受容』を参照すると、戦前(昭和初期頃)の絵葉書の写真には那覇市辻の芸妓らが三線や箏などの楽器と共にヴァイオリンを演奏する姿が映っている。

さらに、1927年に大阪で丸福レコードを開業した普久原朝喜は、琉球音楽の伴奏としてヴァイオリンやマンドリン等の洋楽器を加えて、いくつものレコードを発売している。この時、ヴァイオリンを担当したのが、渡慶次憲行という人物で、彼は名手であったことから「ヴァイオリン・トケシ」とも称されていたそうだ。

渡慶次は戦後、地元の本部町に戻り、1950年代~70年代に流行った「親子ラジオ」でも数々の有名歌手達らの歌にヴァイオリンをのせて演奏していた。最近の琉球音楽の演奏会ではヴァイオリンを耳にする機会は少ないが、現在でも嘉手苅林次や玉城一美などの民謡歌手達が舞台や録音においてヴァイオリンの演奏を披露している。

なお、これまで紹介した例は歌三線の音をなぞるいわゆる「ユニゾン」による演奏であるが、普久原朝喜の息子である、普久原恒勇等が琉球音楽に西洋音楽の理論を導入してからは、ヴァイオリンやピアノ、ギターなどの洋楽器による和音の響きや奏法なども取り入れられるようになった。このようにヴァイオリンをはじめとする洋楽器は今や琉球音楽にも溶け込んでいるのである。

琉球音楽×ヴァイオリンを聴く

琉球音楽におけるヴァイオリンの演奏はあくまで伴奏によるものが殆どであるが、今回は楽器の音色を聴くことが出来る音源を紹介する。
『チコンキーふくばる』は昭和初期に発売されたSP盤の復刻で、おそらく琉球音楽にはじめて洋楽器を取り入れた音源と言えよう。ここでヴァイオリンを演奏しているのが前述した渡慶次憲行である。彼の技法や音程は的確で、名手だったことがわかる。

そして『親子ラヂオは島うたラジオ』では、本部町で放送されていた「渡久地ラジオ」の音源が聴けるが、嘉手苅林昌、金城実、山里ユキらの名歌手の歌三線の伴奏に渡慶次のヴァイオリンが自然と溶け込んでいて妙味である。

そして現在でも活躍する嘉手苅林次の『MY SWEET HOME KOZA』、玉城一美の『天縁』では歌手自らが自身の歌三線にヴァイオリンの演奏も重ねて録音している。二者は今の時代においては貴重な民謡ヴァイオリンの奏者と言えるだろう。

【今号のフォトアルバムキャプション】
❶丸福レコード発売のSP盤。ヴァイオリン:渡慶次憲行の名前が記載 ❷普久原朝喜 『チコンキーふくばる』 普久原朝喜・京子らの演奏のバックに渡慶次憲行のヴァイオリンが聴こえる❸V.A. 『親子ラヂオは島うたラジオ』 嘉手苅林昌や金城実らの歌声と三線に渡慶次憲行のヴァイオリンが溶け込んでいる ❹嘉手苅林次 『MY SWEET HOME KOZA』 嘉手苅林次は嘉手苅林昌の次男。映画「ナビィの恋」では、林昌の演奏に合わせてヴァイオリンを弾く姿が映る ❺玉城一美 『天縁』 玉城の弾くヴァイオリンは歌を引き立てる演奏で現代の名人と言えよう

又吉恭平 PROFILE
沖縄県立芸術大学大学院音楽芸術研究科音楽学専攻修了。国立劇場おきなわ組踊研修修了生(第3期)。琉球古典音楽野村流伝統音楽協会師範(歌三線・胡弓)。現在は琉球古典音楽の演奏家として、県内、県外で活動を行っている。

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