2012年3月26日
「沖縄の歌のオジィの知恵袋」
【第2回】
沖縄音楽歴史を伝承。戦前から戦後復興
談:備瀬 善勝
<芸能の國、沖縄に必要なこと>
60年代に喜納昌永が中城公園で開催した民謡ショーは凄かったですね。瑞慶覧周辺から中城まで登る坂道が車で大渋滞して大変でした。私も向かいましたが、ポンコツ車が途中でオーバーヒートして使用不能になり、結果的に廃車になってしまいました(笑)。
我々が主催している「毛遊びコンサート」も今日までに26回開催していますが、毎回2,000名近くの方々にお越しいただいています。常々感じていますが、やはり芸能は元気でなくてはならない。
そして現代。安室奈美恵を筆頭に沖縄出身アーティストの人気が出たとき、観光客が増えて沖縄が元気になり、景気も上向きになりましたよね。今は韓国の歌が人気を集め、一大ブームを巻き起こしています。実は、韓国の国家予算に占める文化予算は、20%以上と言われています。これは、1930年代にアメリカが大不況だった頃の状況と同じ。政府がハリウッドにお金をかけ、アメリカの文化を世界へ発信したことで、自国の製品を世界に売り込み、成功を収めた。つまり、芸能を利用して不況を脱出した。その事例を今、韓国が取り入れているのです。
現在の日本の国家予算に占める文化予算の割合は、世界と比較にならないほど低い。例えば、パリに旅行するのは、美味しいものを食べに行くためだけではない。 素晴らしい文化を体感したいと思っているからだと思うんです。それが目的になっているということは、『ここには新しい文化があります』と国が有効的に情報を発信し、それがちゃんと受け手に届いているということ。つまり、モノを売るには、 その地域の文化が伝わる芸能や音楽を世界的に広めていくことが大切……ということですよね。
沖縄は、もっと芸能や音楽を世界に発信していく必要があります。沖縄には古典音楽もあれば、カチャーシーのような華やかな曲もある。それだけでなく、戦前からマンドリンやバイオリン、ピアノなど外国の楽器を取り入れた楽曲を作ってきたりと、先人たちは芸能に対してとても貪欲でした。しかし、今の世代には、ヨーロッパの楽器を取り入れることを良しとしない人もいます。ヨーロッパにいる人たちに沖縄の音楽を浸透させるためには、ヨーロッパの音を取り入れた曲もあったほうがいいと思うんですけどね。音楽に対する貪欲さと発信が、今の沖縄音楽には必要だと思います。
【PROFILE】
備瀬 善勝
Yoshikatsu Bise
多数の民謡音源の制作に携わる。百沖実行委員会の委員長。沖縄市でキャンパス・レコードを経営。作詞家としても活動しており、普久原恒勇、知名定男らに詞の提供もしている。
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