2024年11月26日
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沖縄音楽の楽
琉球古典音楽野村流伝統音楽協会の又吉恭平が琉球古典音楽や沖縄民謡など、沖縄音楽の「楽しみ方」を貴重な音源や、曲にまつわるエピソードで伝える連載コラムです。
文|又吉恭平
タイトル:「声楽と琉球音楽」
声楽が奏でる琉球音楽
歌は世界中の至るところで歌われており、ここ沖縄でも「琉球古典音楽」や「琉球民謡」など歌を伴う音楽は多い。そんな中、近年は西洋で誕生した歌唱法である「声楽」においても琉球(沖縄)音楽が演奏される機会が増えてきたように感じる。それは琉球大学や沖縄県立芸術大学など県内の大学を中心に声楽が指導され、その結果、演奏される機会が多くなったからであろう。
琉球古典音楽を学んでいる筆者も「歌を歌う人」の一人であるが、声楽と琉球古典音楽では発声方法が異なるように感じる。歌というものは各国、各地域の言語やその発音と密接に関係しており、ここで簡単に述べられるものではないが、声楽で歌われる琉球音楽を聴くと、改めて自身の学んでいる音楽の発声について考える良いきっかけとなっている。同時に琉球古典音楽や琉球民謡の楽曲が声楽において取り上げられることは実に嬉しく、また誇らしい気持ちになる。
声楽で聴く沖縄メロディー
声楽で琉球音楽を演奏した音源は決して多くはないが、ここではいくつか紹介しておきたい。
LP『合唱組曲 沖縄』は、沖縄本島、八重山、宮古島に伝わる歌を独唱・合唱とオーケストラの演奏で表現した作品である。その楽曲の中には、歌三線の音楽だけでなく「おもろ」や「クェーナ」など普段中々耳にする機会の少ない歌も含まれている。中でも那覇市首里出身の声楽家・城間繁による琉球古典音楽「仲風節」の独唱は、箏による伴奏をピアノに置き換えて演奏されており、古典の奥ゆかしさを残しつつも声楽ならでのダイナミックな演奏を聴くことができる。
LP『沖縄の歌 日本の歌』は、うるま市与那城平安座出身の声楽家・泉惠徳の独演を聴くことができる。このLPの中に収められた沖縄メロディーは「えんどうの花」「帰り舟」「泊り舟」「芭蕉布」の4曲。テノールの音域で歌われる泉の歌声と楽曲のバランスがとても良く聴きごたえのある一枚である。
CD『日本歌曲選集4』は日本を代表するソプラノである鮫島有美子のアルバム。本アルバムに収められた「歌曲集『戦後のふるさと』」は、作詞:浦崎芳子、作曲:新垣雄の沖縄出身の2人による合作である。作詞の浦崎は琉球民謡の作詞家として著名で、代表作には「芋の時代」「あんまー形見の一番着物」等がある。作曲の新垣は、沖縄県立芸大に学んだ。卒業後は精力的な作曲活動を行っており、代表作には「(株)まえさとCM曲」「琉球オペラ アオリヤエ」等がある。本作は声楽の曲として作られてはいるが、歌詞には沖縄の言葉が用いられ、曲は歌詞を引き立てるように作られている。
【今号のフォトアルバムキャプション】
❶美しい沖縄のメロディー、詩を聴けば沖縄の風景が蘇る。写真は、沖縄県大宜味村 喜如嘉の芭蕉 ❷LP『合唱組曲 沖縄』沖縄各地の歌を声楽とオーケストラの演奏で堪能できる ❸LP『沖縄の歌 日本の歌』 沖縄の歌と日本の歌を楽しめる一枚 ❹CD『日本歌曲選集4』 鮫島有美子の歌とヘルムート・ドイチェのピアノ。そこに琉球語の詞と旋律が溶け合う ❺CD『日本歌曲選集4』に収められた「歌曲集『戦後のふるさと』」の作詞を担当した浦崎芳子の詩を伝える民謡鶯組3枚組CD『生きる道』
又吉恭平 PROFILE
沖縄県立芸術大学大学院音楽芸術研究科音楽学専攻修了。国立劇場おきなわ組踊研修修了生(第3期)。琉球古典音楽野村流伝統音楽協会師範(歌三線・胡弓)。現在は琉球古典音楽の演奏家として、県内、県外で活動を行っている。
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